現地LLCでプロベート回避?
2020.10.25 国際相続
1 米国不動産を買うのは個人がいい?法人がいい?
米国不動産を個人で購入して亡くなると、プロベートという米国特有の相続制度が適用されます。
プロベートになると、遺産の分配のために現地弁護士を選任する費用がかかり、さらに2年以上も不動産の処分が制限されます。
これを回避するための「購入後に」行えるTODD手続については、以前こちらで述べました。
今回はもう一歩進めて、「購入時点」からプロベートを回避することができないかを考えてみたいと思います。
プロベートは、個人が米国内に資産を持っているために適用されます。
そこで、個人で所有するのではなく、法人で所有をすることでプロベートの適用を回避することができます。
特に、税金面からみても、個人では2021年から加速度償却が認められなくなり節税効果が薄れてしまった一方、法人では未だに築22年以上の木造物件であれば、建物価値について4年で償却できる魅力があります。
2 法人での所有パターン
法人で米国不動産を所有する場合、具体的には、①日本法人で米国不動産を購入する、または②現地LLC(Limited Liability Corporation)で米国不動産を購入するというパターンが考えられます。
①の場合は、日本法人の株主である日本人が死亡したとしても、日本法人の株式についての相続が発生したに過ぎず、当該株式の相続はあくまで日本法が適用されるのみとなりますので、プロベートを回避する方法として有用です。
一方、②はどうでしょうか。現地LLCの設立は、万一米国で訴訟を提起された場合の法的責任を米国内にとどめ、日本に及ぼさせない方法としてメリットがあるため、それなりに活用がされています。
そのLLCも、①と同じように、LLCに不動産を所有させるだけで米国の相続制度が適用されないと考えてよいのでしょうか?
3.現地LLCのリスクとその対応策
答えはNoです。州により異なりますが、現地LLCの持分を有するオーナーが死んだ場合、LLCの持分について米国内で相続が発生したとして、プロベートが適用されるリスクがあると一般的に言われています。
そこで、LLCのOperating agreementで、予めLLCのオーナーが死亡した時に、個人やトラストなど、誰に自動的にその持分を承継させるかを定めておけば、プロベートの適用を回避することができます。
Operating agreement(運営契約)は、株式会社でいう株主間契約のようなもので、LLCの運営や持分権者の権利関係等について定めたもので、LLC設立時に作成されるものです。これからLLCを設立して不動産を所有される方は、上記の点を踏まえたドラフティングをされることをお勧めいたします。
また、LLC設立後も、Operating agreementを改定することは問題なく認められています。
既にLLCを通じて米国不動産を所有されている方は、Operating agreementを見直し、プロベートに対応した定め方をしているか確認してみてください。
2020年は、個人から法人へと、米国不動産の所有の在り方が変わっていく潮目の年になったと思います。
今後も、キャピタルゲインを期待できる米国不動産を所有する際に知っておいて頂きたいことをお伝えできればと思います。
中村法律事務所 代表弁護士 中村優紀
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